生物電気化学

”生物電気化学”という学問領域を簡単に解説します.
徐々に更新していきます.

バイオ燃料電池

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 いつでも,どこでも,だれでも安全に安心して使える新しいエネルギー技術は,多様化する個人生活において, セキュリティーや医療・福祉,情報通信,移動型・携帯型電子機器等での応用が期待されています. ユビキタスエネルギー技術は,高効率、高密度であると同時に,人々の生活に密着しており, 安全性,環境適合性も達成されなければなりません.近年では,身の回りの”エネルギー”を電力として回収する技術が注目を集めています.
 バイオ燃料電池は燃料電池の一種ですが, 白金などの貴金属触媒に代わって,微生物菌体や酵素を電極触媒に利用し,糖やアルコールさらには有機物廃液 などのバイオマス資源を燃料として利用し発電する次世代型発電装置です. 体積(重量)あたりのエネルギー密度は大変高く長持ちする電池ができます. 触媒は生物工学的な方法で生産可能で,貴金属触媒に比べ資源という観点からも環境に優しい持続可能な発電装置です. 触媒と電極だけで構成されるバイオ燃料電池はシンプルで,様々なサイズや形状の電池をつくることができます.特に超小型化された電池が注目されています.
 想定される応用範囲は幅広く,水質浄化システム,携帯電子機器の電源,生体内埋め込み型医療デバイス用電池, ナノスケール機械のバイオ分子電池など,身近な化合物を燃料とする安全なユビキタス電源として, 情報,通信,環境,医療といった分野での活躍が期待されています.
 実用化に向けた課題は,出力,安定性,容量密度のさらなる向上です.研究室では,実用化に向けた酵素,電極の開発を積極的に進めます.

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「バイオ電池の最新動向」出版
  2012年12月13日「バイオ電池の最新動向」がシーエムシー出版から発売されました.
   監修は京都大学の加納健司教授です.
  □カタログ(pdfファイル)
  □酵素および微生物をもちいたバイオ電池の基礎,
    研究開発の動向がまとめられています.
  □辻村も執筆者の一人として参加しています.


生物と電池

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電気が世間の注目を集めるようになったきっかけは,イタリアの生理学者ガルバーニの”動物電気”の発見でした.彼はメスの先でカエルの神経にふれると足が痙攣する,という実験を公表しました.その原理について,筋肉が電気を蓄える装置になっており,神経を金属がふれることで放電しているのだと考えました.さらに,彼は異なる金属を用いたときに痙攣が強くなることを見いだしています.しかし,同じくイタリアのボルタは,ガルバーニの動物電気説を否定し,金属が電気の発生源で,一組の金属が何か湿った物質にふれたときに電気が発生しているのだと反論しました.しかも,ボルタは,現在のイオン化列の原型ともいえる電気を発生する強さには順序があることも見いだしています.そして,1800年には2種類の異なる金属の間に湿った布を重ねた,”ボルタの電堆”を作り上げました.現在用いられている電池の原型です.この発見により,イギリスのディビーやファラデーの電気分解(電気化学)の研究が大いに発展しました.
 では,生物と電気(電気化学)は関係ないのかというと,近年の分子レベルでの生命現象に関する研究により,そう無関係でもないことがわかってきました.例えば,ミトコンドリアでは,ミトコンドリア内膜での電子移動反応と共役して,プロトンが膜の内側(マトリックス側)から外側へ輸送され濃度勾配ができます.このエネルギーを利用して,ATPが産生されています.まさに,イオンと電子が移動する化学反応,電気化学反応,です.
 そこで,電子の出し手や受け手として電極を用い,電極に適当な電位をかけることで,電子の流れる向きを制御したり,流れる電子の量を計測することができます.この手法によって,生命現象解明にむけた新しいアプローチや,様々な生物電気デバイスへの応用が拓けてきました.

糖尿病と血糖値センサ

糖尿病患者は世界で4億人ほどで,その数はますます増えています.日本でも6人に1人が糖尿病患者あるいはその予備軍と言われています.高血糖状態が続くと重篤な合併症を引き起こす恐れがあります.糖尿病の予防,治療は血糖値を出来るかぎり正常に保つことが基本となっています.それには,糖尿病患者さんがいつでもどこでも手軽で正確に自分の血糖値を知る必要があります.酵素と電極反応を組み合わせた”酵素電極”をベースとした自己血糖計測器が広く用いられています.電極上の酵素によって血液中のブドウ糖(血糖)が酸化され,その濃度に応じた電流が流れます.このような電気化学をベースとした計測システムは,装置の軽量化・低価格化・小型化および,迅速で精度の高い測定が可能になりました.また,計測に必要な血液量も大変少なくなり,患者さんに対する負担の軽減に貢献してきました.
研究室では,糖尿病患者さんがより安心して暮らすことが出来るように,血糖計測技術向上に貢献したいと思っています.一見,シンプルに見える反応ですが,実は大変複雑なのです.電極上で起きている反応メカニズムの詳細な解析,それをもとにした新しい電極デザイン・計測方法に関する研究を行っています.

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