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2013年10月,11月の2ヶ月間,鈴木愛未さんがフランス,ボルドーの共同研究先(CRPP Dr.Nicolas Mano)にて研修を行ってきました.その滞在記です.この写真は下宿先の大家さんのご紹介でシャトー(ワイナリー)にご招待されたときの写真だそうです.粋なおもてなしですね.(辻村)

Boredauxでの生活とCRPP

 2013年の10月からBordeaux という街に研究研修のため二ヶ月間滞在しました。Bordeauxは月の港と呼ばれ街の一部が世界遺産に登録されており、chateauや歴史ある建造物が未だ数多く残っており趣のあるとても素敵な地域です。わたしは初めてヨーロッパの地に足を踏み入れ、その日本とは全く違う風景や人々により保護されながら残されている由緒ある街並みの素晴らしさに魅了されました。

 今回私はフランス国立科学研究センターのCRPP(Centre de Recherche Poul Pascal)という研究所のDr. Nicolas Manoのもとで二か月の研究研修のためお世話になりました。彼の研究室は酵素チームと電気化学チームの二つから成り立っており、常に新鮮な酵素、新しい種類の酵素に恵まれていました。それは私たちからすればとても魅力的な環境でした。彼らは週に一度のミーティングを通し、常に活発な情報交換や議論を繰り広げることでお互いの理解を深め、共にバイオ燃料電池を作るための相互の需要と供給の連携も保っていました。
 二か月の研究生活は新しい環境と言語の壁もあり簡単なものではありませんでした。同じ分野の研究室であってもその研究室でのやり方、こだわり、実験環境、機械などすべてに慣れるのには相当な時間が必要でした。日本でやっていたのと同じ実験をしたくても器機の強度の最適化、研究のためのセットアップでほぼ最初の一か月を費やしてしまいました。
 CRPPの同研究室の仲間が常に自分をサポートしてくれていたおかげで二か月目の実験は順調に進めることができました。フランス人はそれほど社交的な国民ではありませんが、困っていることがあるといつも親身になって手助けをしてくれました。互いに母国語でない言語でコミュニケーションをとりながら研究を進めるのはとても困難でしたが、理解できた時の達成感は日本では味わえない新鮮なものでした。残念ながら二か月という期間は実験をするにはあまりにも短く、私の研究は途中で終了となってしまいましたが、国立機関の研究室の洗練された無駄のない実験方法や、慎重かつ正確さを求める姿勢を身をもって学ぶことができたと思います。ここで学んだことはこれからの研究に生かすべきですし、今後さらに自分たちの研究を発展させていく良いチャンスだと思っています。

 日本と違ってヨーロッパはいろんな国の人が出会える地域です。いい意味でも悪い意味でもさまざまな人がいます。特にこのような場所にいると嫌でも自国と比較することが増え、そのおかげで日本のいいところも悪いところも自分の中ではっきりと認識できました。日本の治安の良さ、フランスの国産食物に対する意識や独特の教育方針、そして国同士がつながっている地域だからこその多文化的な生活と日本の独自発達した生活の照らし合わせなど、この「他国と自国を比較する」という経験はやっぱり日本にいたらできなかったし、自分の意識を見直すいい機会になったと思います。
 国外に飛び出そうとする気持ちは大切です、それに興味がある後輩は是非そういう機会を自分自身で増やしてもらいたいです。ただ私は日本を出た後自分が日本の国、文化、歴史という分野において空っぽだったことに気がつきました、そしてこういう話題こそが日々の何気ない食事中の会話やお酒を交えながらの談話で最も他国民の興味を惹くということも。歴史や、文化もそうですが政治のこと隣国問題、経済状況なども詳しく知らなくて恥をかきました。そのため暇をみつけてはインターネットで日本のことを調べる日々が続いたこともありました。たとえ日本語だったとしても話せない会話を振られて焦る事もしばしばで、自分の知識、教養や趣味の幅が狭かったことを今なお実感しています。この経験のおかげで今はまだ自分が日本で学べることがたくさんあるし、日本についてももっと学ぶべきだということを再確認しました。自分の専門分野だけでなく、浅くとも広い視野で色々なことに興味を抱く姿勢をこれからは大切にしていきたいと思っています。
 言語の話をすると、こちらの方は大学に通っている方なら3-4ヶ国語は話せます。もちろんヨーロッパの言語は似たり寄ったりなので彼らにとってはそれほど難しいことではないようですが、大学生なら英語が話せるのは当たり前でそれ母国語と住んでいる国の言葉は話せるという方が多かったです。そんな中で自分は2ヶ国語しか喋れないのに英語は彼らに及ばない程度であることを恥ずかしく思いました。

つまりは会話力と中身

 結局はどこにいても人と交流する点で必要なものは日本で求められているものと何ら変わりないです。興味や知識の幅が広く、話していて相手の興味をそそることができたり会話が楽しいと思わせられる、今はそんな他愛もない会話の中に教養が垣間見える人に魅力や尊敬の念を感じています。そしてそんな会話がさらに言葉の壁を越えたら、人生がもっと楽しくなりそうです。簡単なことではないですが、時間をかけてその二つを自分のものにしていく価値はあると思いました。

 この二か月を通して研究はもちろんですが、フランスの文化や国民性、ヨーロッパにおける日本の姿など日本で体験できなかったことに触れ、新しい目標が持てました。この新鮮な気持ち忘れずにこれからも常に成長し続けたいと思います。

 最後にこの海外研修でお世話になったCRPPの方々、フランスでの生活を手助けしてくれたSabrina、そして私の海外研修を後押しし、常に日本からサポートしてくれた辻村先生と辻村研究室のメンバーに感謝したいと思います。

理工学群応用理工学類電子量子主専攻 4年 鈴木愛未 (2013/12/11)



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