金属析出増感クーロメトリーによる酸化還元物質の検出


研究目的

 血液分析や細胞分析においては、マイクロ〜ナノリットル単位の微量溶液中の低濃度物質の検出・定量が求められる。しかし、従来の電気化学測定法では、電極付近での検出対象物質の枯渇や時間経過に伴って増大するバックグラウンドにより、微量溶液分析の際に検出限界を下げることが困難であった。そこで本研究では、金属腐食の原理を応用し、検出対象物質を金属析出に変換することにより、この問題を解決した。また、析出させる金属を変えることにより、析出の際の電位を制御し、選択的な検出を試みた。


研究内容

 システムの基本的な構造を図1に示す。本デバイスは、電極、ポジティブレジスト絶縁膜、PDMSによる流路からなる。電極は一電極作用極(Pt)、参照極(Ag/AgCl)、対極(Pt)のパターンを作製し、一電極作用極は高効率な検出対象物質の酸化のために上部にくし型電極を持つ。ポジティブレジスト絶縁膜は電極に沿ってパターンされており、一電極作用極上にピンホールを作る役割も持つ。PDMS流路は液絡で繋がれた2本からなり、片方の流路ではくし型電極上において検出対象物質の酸化、もう一方ではピンホール電極上において金属の析出が自発的に進行する。 また、上部の流路は微量溶液を計量できるように設計されている。ピンホール電極上に濃縮されて析出した金属は迅速に溶解するため、バックグラウンド増大前に測定を終了することが可能である(図2)。本研究では、析出させる金属を変更してp-アミノフェノール(PAP)と過酸化水素の測定を行った。その結果、析出させる金属を銀から銅とニッケルに変更することで、測定値に差が生じた(図3)。このことから、析出金属変更によって、選択的な検出が可能であることがわかった。


図1:デバイスの立体図

図2:測定シグナル

図3:析出金属変更による測定値の変化