肝機能検査のためのマイクロフルーイディックデバイスの構築


研究目的

 グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)は、肝硬変・脂肪肝・心筋梗塞・肝臓ガンなどの肝臓・心臓機能の障害によって血液中に流出する酵素である。したがって、血液中のGOT、GPT活性は、肝機能を始め、いくつかの内臓機能の重要な指標となる。現在の血液検査は、病院などで採血・測定が行われているが、携帯型装置での測定が可能となれば、日々の健康管理や緊急の検査に非常に有用となる。そこで本研究では現在の分光学的測定法に変わり、微小化が容易である電気化学的測定法を用いて、GOT、GPT活性測定用微小センシングシステムの作製を目的とした。


研究内容

 GOT、GPTはいずれもその酵素反応により、L-グルタミン酸を生じる。本研究では、この点に注目し、L-グルタミン酸オキシダーゼ(GlOx)を用いたL-グルタミン酸センサにより、L-グルタミン酸の生成量から、GOT、GPTの活性を求めた。L-グルタミン酸センサは、ガラス基板上に三電極を形成し、ここにGlOxを固定して作製した。システムは、このL-グルタミン酸センサと、流路を形成したポリジメチルシロキサン(PDMS)基板を積層することにより作製した。また、システム微小化のため、低駆動電圧、低消費電力な電気化学的な水素気泡の生成を利用して送液を行うバブル型ポンプを作製し、システムに組み込んだ。
 サンプル溶液と基質溶液をY字型の流路に注入・送液し、合流部よりも下流で拡散により混合させ、送液停止後の応答曲線の傾きから酵素活性を求めた。




Fig. 1 バブルポンプを集積化したシステムの構造図


Fig. 2 蛍光色素(フルオロセイン)の拡散の様子



[参考資料] Naoto Ohgamia, Sanjay Upadhyaya, Ayumi Kabata, Katsuya Morimoto, Hitoshi Kusakabe, and Hiroaki Suzuki“Determination of the activities of glutamic oxaloacetic transaminase and glutamic pyruvic transaminase in a microfluidic system,” Biosensors and Bioelectronics 22 (2007) 1330-1336