超撥水性を利用した濃縮的重金属分析チップ(積水化学共同研究プロジェクト)


研究目的

 近年、重金属を現場で直接測定する必要性が増大している。このためには、分析システムの微小化が不可欠である。従来、電気化学的な重金属分析には水銀電極が用いられてきたが、これは上記の応用上好ましくない。しかし、他の金属電極では電位窓、感度の点で水銀に及ばない上、微細加工時に表面を汚染しやすいという問題があった。本研究では、この問題を解決するため、超撥水性を利用してサンプルの蒸発的濃縮を行うことを検討した。


研究内容

 超撥水性を利用してサンプルの蒸発型濃縮を行うことにより、低濃度の重金属分析も容易に行う手法を開発した。テフロン微粒子によって、接触角160°以上の超撥水面が得られる。この超撥水面を利用したサンプル濃縮を行うことにより、アノーディック・ストリッピング・ボルタンメトリーの感度向上が可能となる。この効果はサンプル量を多くすること、および電極活性部面積を小さくすることによりさらに改善される。濃縮による感度向上は、10 mlのサンプルを用いた場合、いずれの重金属とも100倍を越え、5 mlの液滴を用いた場合の検出限界は1 ppbと実用に耐えうる感度が得られた。




チップの構造




超撥水性を利用した蒸発的濃縮



[参考資料] Isao Yanagimachi、Norihiro Nashida、Koichiro Iwasab、Hiroaki Suzuki、”Enhancement of the sensitivity of electrochemical stripping analysis by evaporative concentration using a super-hydrophobic surface”、Science and Technology of Advanced Materials 6 (6):671?677 September 2005
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