電気化学的原理に基づく肝細胞のアンモニア代謝測定チップの構築


研究目的

 近年、未分化な細胞から分化誘導した細胞を、欠損または障害を受けた臓器や組織の治療に用いる再生医療が注目されています。この技術を確立するには、高価な成長因子を用いてその濃度や組み合わせ、添加のタイミングなどを検討し、分化誘導条件を確立する必要があり、そのため、極微量の培養液中で極少数の細胞の機能を解析するデバイスが求められています。本研究では、電気化学的原理を利用した送液機構を集積化し、培養から測定までの一連の作業をチップ上で行える機能計測システムを構築し、成熟肝細胞の指標の一つであるアンモニア代謝機能のモニタリングを試みています。


研究内容

 本研究で作製したチップは、送液およびセンシング用電極群を形成したガラス基板、および培養チャンバー、流路を形成したPDMS基板から構成されています(Fig. 1)。培地のサンプリングおよびセンサ部へのサンプル溶液の送液にはエレクトロウェッティングを利用しています。また、アンモニアセンサとしては、エアギャップ型セバリングハウス型アンモニアガス電極を形成し、培地のアンモニア濃度を測定しました。
 Fig. 2には、異なる播種細胞密度でのアンモニア濃度の変化を示しています。播種直後から30分間で急激にアンモニアの代謝が認められ、また、播種密度が高いほどアンモニア添加直後から代謝が急速に進む様子が認められました。この変化は、従来法による実験結果と良く一致しており、本システム上でも測定が正しく行われていることが確認できました。本チップでは、煩雑な前処理を必要とせず、電位操作のみで測定が迅速に行えるため、高い時間分解能で自動的な測定が可能となります。





Fig. 1 アンモニア代謝測定チップ

Fig. 2 マイクロデバイスを用いたアンモニアモニタリングの結果
(○がデバイス(細胞密度2種類)、●が市販のディッシュ)



[参考資料] W. Satoh, S. Takahashi, F. Sassa, J. Fukuda, and H. Suzuki, On-chip culturing of hepatocytes and monitoring their ammonia metabolism, Lab on a Chip (IF=6.26), 9(1), pp.35-7 (2009)