金ナノアンテナ構造の電場増強を用いた高感度蛍光センシング


研究目的

 蛍光技術は、イムノアッセイ、核酸検出、臨床検査など幅広い分野・用途で活用されているが、蛍光色素の持つ蛍光強度の低さや量子ドットの生体毒性が利用における課題となる。これに対し、金属特有の光学現象である表面プラズモン共鳴による電場制御・増強効果を適用することが出来れば、光の吸収効率を劇的に高め、微弱な励起光でも強い蛍光を発する蛍光素子の創製が可能となる。本研究では、その基盤技術として金属ナノ粒子の配列及び配向を制御したナノアンテナ構造を構築し、ギャップ部に蛍光色素を挟み込むことで増強電場を利用した高輝度蛍光素子の開発を試みた。


研究内容

 本研究では、金ナノロッド(GNR)の配列及び配向を制御したナノアンテナ構造を構築した。まず、界面活性剤水溶液中で金ナノ粒子を成長させるシード法により金ナノロッドを合成した。続いて、合成されたGNRの結晶構造異方性を利用し、構造両端部のみを選択的にチオール化DNAで修飾した。配列・配向を制御したナノアンテナ構造を得るため、固相表面から逐次的にGNRを伸長させる合成方法を開発した(金ナノロッド鎖固相合成法)。この方法では、ポリスチレンビーズを支持担体とし、ジスルフィド結合を有するDNAで修飾した後、DNAハイブリダイゼーションによりGNRを一つずつ結合させる方法である。 最後に、合成されたGNR鎖に対し、還元処理を施すことで基底部のジスルフィド結合を切断し、ナノアンテナ構造を得た。DNAを染色する蛍光色素を用いてアンテナ構造のギャップの部分に蛍光色素を挟み込むことで、ナノアンテナ構造の蛍光増強を評価した。



金ナノアンテナ構造の概念図

金ナノロッド鎖固相合成法

金ナノアンテナ構造の電子顕微鏡像