化学的マイクロポンプと微小流路ネットワークによる
送液プログラミングとその化学分析への応用


研究目的

 次世代微小化学分析システム(µTAS)に求められる重要な機能の一つは自律的動作であり、送液制御はこの中でも最も重要な課題である。ポンプ、バルブによる送液制御は、プログラムにしたがって外部からの電気信号により行うことも不可能ではない。しかし、あらかじめチップ上にプログラムが書きこまれ、外部から何も信号を与えなくても自発的に決められた手順にしたがって送液制御を行うことができれば、駆動装置側の負担が軽くなる。そこで本研究では、過酸化水素から酸素気泡を生じる触媒反応を利用し、このとき生じる体積変化をポンプ駆動力とする化学的マイクロポンプを作製し、化学分析へと応用した。


研究内容

 マイクロポンプ上部の区画に被送液溶液を満たした後、制御用流路に過酸化水素溶液を導入すると、毛細管現象により自発的に送液され、ゲル内に浸入する。ここで、過酸化水素と二酸化マンガンの反応により生じる酸素気泡の体積膨張によってダイヤフラムが押し上げられ、マイクロポンプ内の被送液溶液が押し出される(Fig. 1)。Fig. 2は、3つのポンプを並列的に並べ、それぞれのポンプから流路に順次溶液が排出される様子を示している。化学分析への応用として、2種類の溶液を混合するシステムを作製し、被送液溶液中の過酸化水素の検出を行った。酵素西洋わさびペルオキシダーゼ (HRP)の存在下でAmplex redと過酸化水素を反応させ、生成物Resorufinの蛍光強度により、過酸化水素濃度を求めたところ、濃度の増加に伴う蛍光強度の増加が確認された。


Fig. 1 ポンプの構造と動作原理


Fig. 2 送液の様子

[参考資料] 高島篤司、福田淳二、鈴木博章、化学的マイクロポンプと微小流路ネットワークによる送液プログラミングとその化学分析への応用、第76回電気化学会、京都大学、平成21年3月