エレクトロウェッティングによるpH応答性バルブの構築


研究目的

 近年、次世代微小化学分析システムの一形態としてカプセル内視鏡に代表される消化管内マイクロシステムの研究が進められている。内視鏡のような画像情報のみではなく、消化管内の化学分析を実現するには、生体試料を適切なタイミングでサンプリングすることは重要な課題である。例えば、胃液内成分を調べる場合、システムが胃液内にあることを感知してサンプリングを自動的に行えることが望ましい。本研究では、サンプル溶液のpHを感知して自動的に開くバルブを実現した。


研究内容

 pH応答性バルブを実現するにあたり、参照極にpH指示電極を用いる変則的三電極系とエレクトロウェッティングを用いたバルブを組み合わせ使用した。エレクトロウェッティングとは、電極表面に電位を印加すると、その表面の濡れ性が変化する現象である。
 このシステムは参照極にpH指示電極を用いているため溶液のpHに応じてエレクトロウェッティングを起こすために必要な印加電位が生じる。さらにあらかじめ印加する電圧を設定することでバルブが開くpHを制御することも可能である。
 Fig. 1 には、この原理によりバルブがpH 2 またはpH 12 では開くが、pH 7 では開かない様子を示している。このようにして、カプセルに搭載可能な非常にシンプルな動作原理で、pH応答性バルブを実現した。



Fig. 1 Response of the valve to solutions of different pH. Working electrode potential: +0.6 V (pH 2 and 7); -0.5 V(pH 12).


[参考資料] 山口茂輝、森本克也、戸谷真理子、福田淳二、鈴木博章、エレクトロウェッティングによるpH応答性バルブの構築、第44回化学センサ研究発表会(電気化学会秋季大会)、東京工業大学、平成19年9月