化学センシングのためのバブル型双方向マイクロポンプ


研究目的

 血液検査は臨床検査の基本的なものであり、幅広い疾病に対応し、化学物質の正確な体内濃度を反映しているといった利点がある。しかし、血液を検体として用いるには通常数ミリリットル程度の採血が必要となる。針を腕に刺す痛みがあるうえ、病院へ出向く必要があることなどが患者の負担となっている。そこで、患者の負担を軽減するため、採血の痛みをなくし、自宅に居ながらにして病気の診断を行いたいと考えた。具体的には、小型のチップに無痛針・化学センサなどを集積化し、痛みのない採血から病気の診断までをワンチップで行おうと考えた。 そのためにはチップだけで直接採血を行う仕組みやチップ内でサンプルや試薬を操作する必要があり、チップへの集積化に適したマイクロポンプの開発を行った。


研究内容

 本研究で作製したマイクロポンプの構造と動作原理を図1、図2に示す。 流路内に電解液として塩酸をあらかじめ導入されている。電極に負電位を印加することにより電解液の電気分解を行い、ガスチャンバー内に水素ガスを発生させると、ガスが溶液を押しのけ、流路に溶液を押し出す。そして、溶液を押し出したのちに、水素発生の際とは逆に、作用極に電位を印加することで水素ガスを酸化し、水素ガスを消滅させる。この時のガス体積の減少によって溶液の吸引を行う。 シンプルな構造で溶液の押し出しと吸引が可能、化学センサと同一の作製プロセスで一括作製が可能といった利点をもつ。このポンプを用いて微小針(内径70 μm)からのサンプル吸引や微小流路内での複数種類の試薬溶液の操作が行えることを確認した。


図1:マイクロポンプの構造

図2:マイクロポンプの動作原理

図3:無痛針からのサンプル吸引