エレクトロウェッティングを用いた自動混合機構


研究目的

 従来、チップ上で溶液を混合する際にはシリンジポンプのような外部ポンプを必要としていた。しかし、外部ポンプを用いるようでは真の意味でLab-on-a-chipを実現することができない。さらに、単純に人間がチップの状態を観察しながら手動で送液するのではなく、電子回路のような機能を、微小流体を扱うマイクロフルーイディクスを用いて実現できないかと考えた。つまり、溶液自体に回路のスイッチングを行わせ、次々に送液・混合を自動的に行うことができるチップの構築を目的とした。本研究ではまず最もは単純な例として、2種類の溶液を自動的に混合させることが可能かどうか検討した。


研究内容

 システムは、エレクトロウェッティング(電極に電位を印加するとその表面の濡れ性が変化する現象)に必要な電極を形成しガラス基板と、流路を形成したPDMS基板を張り合わせて形成した(図左)。一方の注入口から溶液を滴下すると毛細管現象により溶液は自発的に流路内を進む。次にもう一方の注入口にも溶液を滴下すると同様に流路が溶液で満たされるが流路の一端に配置した銀/塩化銀電極まで溶液が到達するとエレクトロウェッティングの回路が自動的に有効になり、エレクトロウェッティングによってそれぞれの流路を満たした2液が混合される。すなわち、溶液をシステムの注入口に滴下するだけで自発的に溶液は濡れ広がり、1対1の混合比で混合することが可能であった。今後、この原理をマイクロ流路を利用した正確な定量センシングへ応用する。







[参考資料] 大西範幸、細野裕樹、佐藤航、森本克也、戸谷真理子、福田淳二、鈴木博章、複数機能を集積化したマイクロ電気化学発光センシングシステムの構築、 平成19年「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム、タワーホール船堀、平成19年10月