毛細管現象を利用した送液システム


研究目的

 µTASと呼ばれる微小化学分析システムを実現する上で、マイクロポンプの研究は非常に大きな役割を果たすと考えています。しかし、これまで研究が進められてきたものの多くは、その構造が複雑であったり、駆動電圧、消費電力が高いと言った問題があり、必ずしもセンサとの集積化に適したものではありませんでした。そこで本研究では、センサとの集積化を念頭に置き、毛細管現象とエレクトロウェッティングを組み合わせることで、シンプルな構造で、消費電力の小さい送液システムの構築を目的としました。


研究内容


 毛細管現象は上に示したWashburnの式によってその送液が表されることが知られています。そこで、この送液を制御するために、左の図が構築した送液機構です。ガラス、PDMS基板を用いた毛細管に非常にシンプルなバルブとしてエレクトロウェッティングを制御するための金電極が形成されています。毛細管現象による送液機構がこの金電極で制御できるというものです。この構造ではわずか-0.9Vの電位と10 µWの消費電力で送液が制御できました。
 さらに、駆動部が無く複雑な構造を必要としないため、図2のように複雑な送液ネットワークを構築することができ、今後センサとの集積化など様々な応用が可能であると考えられます。



図1. 送液システムの構造図


図2. エレクトロウェッティングバルブを用いた送液ネットワーク

[参考資料] W. Satoh, H. Hosono, K. Morimoto, H. Yokomaku, and H. Suzuki, "Highly sophisticated Electrochemical Analysis system with an Integrated Microfluidic System Based on Electrowetting," Proceedings of The 5th IEEE Conference on Sensors, Daegu, Korea, Oct (2006)