微細構造を形成した金電極表面でのエレクトロウェッティングとその応用


研究目的

 微少流体制御において、界面張力は大きな抵抗となる場合があるが、逆にこれを積極的に利用することにより、高効率な制御を行うことができる。エレクトロウェッティングは界面張力を制御する1つの手法であり、これを応用したさまざまな素子が提案されている。我々は既に金電極上でのエレクトロウェッティングを利用した素子を提案しているが、濡れ性の変化を増幅できれば、送液性能の向上が期待できる。そこで本研究では数十µmオーダーの微細凹凸構造を付与した金電極表面を作製し、この表面でエレクトロウェッティングを増幅するメカニズムについて理論的、実験的に検討を行った。また、このような表面を送液デバイスの作用極として応用し、より効率的な送液の実現を試みた。


研究内容

 厚膜フォトレジストで形成した鋳型を用いてPDMSの凹凸構造を作製し、この表面に金をスパッタリングした。なお、凹凸構造の形状は円柱とした。Fig. 1に直径が10, 20, 50 µmの円柱を形成した電極と、平滑電極での液滴の電位依存性を示す。電位を印加すると、凹凸電極の方が濡れ性を大きく変化し、直径が小さい10 µmの電極で最も大きな変化が認められた。また、Fig. 2には送液の評価に使用したデバイスを示す。送液特性を評価したところ、凹凸電極を有したデバイスでは、平滑電極のデバイスよりも約3倍の送液速度の増大が観察された。



Fig. 1 液滴の電位依存性


Fig. 2 送液デバイスの構造

[参考資料] 横幕浩臣、佐藤航、鈴木博章、微細構造を形成した金電極表面でのエレクトロウェッティングとその応用、平成19年電気学会全国大会、富山大学、平成19年3月