〜筑波大学物質工学系 門脇研究室〜

高温超伝導の不思議

これから自然界の不思議な現象、高温超伝導の、超ミステリーストーリーをご紹介します。

高温超伝導ってなに?どうして起こるの?

これが解ければ確実にノーベル賞。現状でもまだ解明されていないのだ!普通の金属、合金系の超伝導はBCS(Bardeen-Cooper-Schrieffer)理論(1957年)で基本的なメカニズムは解決されたとして考えられている。それは電子と電子が電子−格子相互作用によって電子対(Cooper-pair)ができ、それが巨視的量子状態に転移することによって起こるのだ。 さて、果たして高温超伝導は・・。

どこが違うの?

現象としてまずTcが高い。140 Kにも達する物質が発見されている。 こんなことは普通の金属、合金系ではない。さらに、元来、母体は絶縁体だ!(金属ではない!)どこまでTcが上昇できるのかは実はよくわかっていない。 常温超伝導も夢ではないかもしれない。 なぜ絶縁体が超伝導に? これが、ミステリーストーリーのクライマックスさ。 電気が全く流れなかった母体物質に動ける電荷をわずかに注入すると突然超伝導になり、 電気抵抗ゼロになる!そのからくりは電子間の「強い相関効果」にあることまではわかっている。 母体の絶縁体は金属として生まれるはずだったが、強い電子相関のために絶縁体として生まれてしまったのだ。 そこで、少しでも動ける電荷があると何らかの機構で電子対が発生し、それがいきなり超伝導状態に凝縮する。 (それらの対電子が巨視的な数で量子論的に位相がそろった状態となる)と考えられている。 しかしながら、これを説明する厳密な理論は今のところ無い!

超伝導になったらなにかいいことあるの?

超伝導の大きな特徴の一つは電気抵抗がゼロである。すなわちエネルギー損失がない! しかし、これは理想的な場合であり、現実には損失がある。高温超伝導においてこの損失は極めて大きい。 これは、磁束線が外力に抗しきれず運動するからである。 高温超伝導体を実用化するためには、磁束線の運動形態を把握し、さらにそれをきめ細かく制御する必要がある。 さらに、二つの超伝導体が弱く結合した状態は、ジョセフソン接合と呼ばれ、極めて多様な新しい物理現象が発現する。 これをうまく使えば超高感度電磁波検出デバイスが可能となる。

将来、高温超伝導を使ったらどんなことができるの?

高温で電力損失がないことから、電力輸送、電力貯蔵、超伝導磁気浮上列車など大電力応用やジョセフソン接合を利用した超高速デバイス、 超高感度マイクロ波、遠赤外検出器、超伝導コンピューター、フィルターなどのエレクトロニクス応用など極めて幅広い応用が可能である。 これが高温超伝導体は最先端材料と呼ばれる所以である。 超伝導を使って近い将来、地球のどこからでもポケット電話で通信できる日が来るかもしれない。 こんなふうに・・・。

 

おまけ(上の説明をさらにかみ砕くと・・)
助手Kと大学院生Nの会話抄録〜ある門脇研の朝〜

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