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院生募集筑波大学・先導的研究者体験プログラム学生(ARE)募集

◎当研究室でできること

◆テラヘルツ帯赤外・ラマン分光による不規則構造系の普遍的ダイナミクスの研究

◆タンパク質や高分子ガラスにおけるテラヘルツ帯ダイナミクスに関するデータ科学を用いたアプローチの開拓

◆テラヘルツ分光による物性研究全般

◆テラヘルツ時間領域分光の新規光学系の開発

具体的内容や進路に関する質問・相談は、mori_at_ims.tsukuba.ac.jpまで気軽にご連絡下さい。

◇近年、急速に進展しているテラヘルツ帯分光技術および計算科学を用いて、ガラスの物理の未解決問題の解明と応用に向けて、精力的に取り組んでいます。国内外の多くの共同研究者と共に、科学の進展にトライしてみませんか?

研究概要 : 1

テラヘルツ帯の様々な素励起の研究

テラヘルツ光とは、周波数が10の12乗の振動数を持つ、波長が約0.3mm程度の光(電磁波)のことです。私たちの身近な光(電磁波)の例としては、毎日の生活に欠かせない携帯電話(スマートフォン)に用いられる電磁波の波長は約40cm程度、一方、可視光は緑色の波長であれば約500nm程度です。テラヘルツ光は、それらの光の中間の振動数を持つ電磁波であり、2000年頃までは「電磁波の未開拓領域」や「テラギャップ」と呼ばれていましたが、近年の目覚ましい研究進展により、基礎・応用の両面からテラヘルツ光の研究および利用が盛んになっています。
 本研究室では、物質のテラヘルツ帯応答を、主にテラヘルツ時間領域分光法とテラヘルツ帯ラマン散乱法を用いて調べることで、テラヘルツ帯に存在する様々な重要な素励起に関する研究を行っています。

研究概要 : 2

テラヘルツ帯分光および大規模MDシミュレーションによるガラスの普遍的励起の研究

当研究室では、現在、不規則構造体(ガラスやタンパク質など)におけるTHz帯普遍的励起に着目し、THz分光および分子動力学(Molecular Dynamics, MD)シミュレーションを利用した研究を推進しています。
 研究対象の一つは、ガラスのボゾンピークと呼ばれる励起で、不規則構造体に現れる普遍的励起であり、また、ボゾンピークはガラスの物理における未解決問題の一つとしても有名です。ボゾンピークが関連、または起源となる身近な現象には、ガラスの熱の伝わりにくさガラスの壊れやすさ、そして、次世代通信で利用したいTHz光を遮断してしまう、などがあります。特に通信に関しては、ボゾンピークが1THz付近に存在して光(電磁波)の吸収を引き起こします。そのため、ボゾンピーク周波数以上の光(テラヘルツ光)は通常の建築物の窓ガラスを通り抜けることができず、ボゾンピークが無線通信の高周波限界の要因の一つになっています。

 近年ではこのボゾンピークを説明し得る有力な理論による検証も進みつつあり、さらにTHz分光、そして大規模MDシミュレーションによる研究の進展も目覚ましいです。しかし、理想的なガラスではボゾンピークの起源は理解されつつあるものの、現実ガラス(シリカガラスなどの酸化物ガラスを始めとする様々な物質)では、定量的な理解が十分には進んでいません。本研究室では、大規模MDによる現実ガラスのボゾンピークの理解、そして、THz分光によるボゾンピークと光の相互作用の理解に挑戦します。もしTHz光とボゾンピークの相互作用が十分に理解された場合、ガラスに対する新しいTHz光の応用利用の可能性が拓かれるでしょう。不規則性由来の普遍的励起の基礎理解を通して、ボゾンピークが関連する現象の学理に基づく制御と応用利用を目指します。
 もう一つのトピックは、「フラクタルダイナミクス」です。もしナノスケールに「フラクタル構造」が存在する場合、ダイナミクスはどのように振舞うか?について注目しています。これは「フラクトン」と呼ばれる励起で、1990年頃に集中的に研究が行われました。しかし、当時はまだテラヘルツ帯の分光技術が十分発達していなかったこと、および大規模MDが容易に行えなかったことから、現実物質におけるフラクトンは、時には存在自体を否定されることもありました。これに関し、発現が期待されるタンパク質やゲル構造物質において、最新の分光およびMDによるフラクタルダイナミクスの検証と理解に挑戦します。局在モードの側面も持つフラクタルダイナミクスの研究は、シリカゲルなどの低熱伝導性の理解と制御、およびタンパク質などの生体物質におけるエネルギー輸送の理解に繋がることが期待されます。


研究概要 : 3

テラヘルツ帯赤外・ラマン分光を用いた相補的な分光手法による物性研究

当研究室では、高精度のテラヘルツ帯赤外・ラマン分光を主軸とし、様々な帯域の分光を物質に対して行うことで、研究対象の未解明の物性を明らかにしていきます。
 主軸の装置は、「テラヘルツ時間領域分光装置」という手法で、これは発生したテラヘルツパルス波の電場の時間波形を記録するというユニークな装置です。高性能のフェムト秒レーザー利用によって発生したテラヘルツパルス波は安定性が高く、それが高精度のスペクトル取得に繋がります。
 当研究室のテラヘルツ時間領域装置の特徴は、
(1) 高精度に電磁波形を取得することにより、光伝導アンテナという発生手法で約0.1~4.5THzの帯域をカバーします。
(2) 特殊な液体Heフロー型のクライオスタットを用いることによって、4K~800Kまで連続的な温度変化測定を可能としています。
(3) 測定の全プロセスを自動化することにより、長時間の連続的な測定が容易なことはもちろん、人為的な操作ミスによるスペクトル精度の低下を防いでいます。
 良い精度のスペクトルによって対象を視ることによって、物質の振る舞いの本質に気付くことが多くあります。当研究室は目標の高精度スペクトルを得るべく、必要な光学系を構築し、分光研究を推進していきます。

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