外部からの刺激で発光色が変化する白金錯体

 

有機金属錯体の溶液にUV光などを照射すると、錯体の構造に対応した色の発光を示すことが知られています。一方で固体状態では、分子同士が非常に近い位置をとっているため、隣の分子からの影響によって発光の色や強度が変化します。そのため、固体状態における分子同士の位置関係や配列が制御できれば、固体状態における発光特性を制御することにつながります。この位置や配列の制御をする方法の一つとして、水素結合などの分子間相互作用の利用が挙げられます。

当研究室では、優れた発光性を示すNCN ピンサー型白金錯体に水素結合部位を加えるという、新たな分子設計を行いました。水素結合部位としてアミド基を導入した錯体は、固体中に残存した溶媒分子と相互作用することで、様々な分子の配列を取ることが分かりました。また、水素結合による相互作用は可逆性があるため、外部から刺激を加えることで分子の配列を自在に変化させることができます。これらの特徴を利用して、分子配列の変化とそれに伴う発光色の制御が可能になりました。下の図に示すように、一つの分子が状態によって、緑、オレンジ、黄色の3つの発光色を示します。この色の変化は手ですりつぶしたり、溶媒の蒸気をあてたりするだけで引き起こすことができる興味深い結果です。

 

 

 三種類の発光色が発現するのは、分子の配列の違いによって引き起こされていることを単結晶X線構造解析などによる分析によって確かめました。特に、配列の違いによってPtPtの距離が変化することが、発光色の変化と密接に関連しています。

 

 

普通は分子やその配列を直接目で見ることはできませんが、この錯体では発光色の変化から分子の並びが予想できます。このように、ミクロな分子の変化を目で確認できるようなマクロな特性の変化へと増幅できるような超分子の研究を進めています。

研究内容

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