筑波大学 数理物質科学研究科
鈴木・福田研究室
マイクロ溶液プラグによる逐次反応型
マイクロバイオセンシングシステム
研究目的
 マイクロシステム上でDNAやタンパク質などの分析を行う場合、溶液の交換が必要になる。オンチップにおける従来の溶液交換では、溶液数の増加に伴う操作の複雑化や、サンプル溶液のデッドボリュームが多いという問題点があった。そこで本研究では、迅速かつ効率的な溶液交換を目指し、流路中に複数の溶液プラグを形成し、それらを一括して送液することのできる逐次送液システムの構築を目的とした。また、このシステムのバイオセンシングへの応用として、肝臓癌の腫瘍マーカーであるα‐fetoprotein (AFP)の検出を試みた。
研究内容
 システムの基本的な構造を Fig.1 に示す。6つの溶液導入用ポンプと1つの送液用メインポンプによりシステムを構成した。ポンプには水素気泡の生成・収縮を利用するバブル型ポンプを用いた。水素気泡を生成させてダイヤフラムを押し上げ、ポンプ内の溶液を流路中に排出することで溶液プラグが形成される(Fig.2) 。 実際に、流路中に空気層により分離されたプラグ群を形成し、プラグ形状を保ったままそれらを一括して送液することができた(Fig.3)。さらに、抗原・抗体反応を利用して、AFPの検出を行った。固定化された一次抗体に、AFPや蛍光標識された二次抗体などのプラグを順次送液し、抗原・抗体複合体を形成後、蛍光強度を測定したところ、AFP濃度の増加に伴い、蛍光強度の増加が確認できた。
PDMS基板
PDMSダイヤフラム
シリコン基板
電解質ゲル
ガラス基板
Fig.1 システムの構造
Fig.3 送液の様子
サンプル溶液
ダイヤフラム
電解液
Fig.2 プラグの形成原理
水素気泡
[参考資料]
清水義文、佐藤航、福田淳二、鈴木博章、マイクロ溶液プラグによる逐次反応型バイオセンシングシステム、
平成19年電気学会全国大会、富山大学、平成19年3月