筑波大学 数理物質科学研究科
鈴木・福田研究室
電気化学発光を利用した高機能
マイクロセンシングシステムの研究
研究目的
高度な微小化学分析システムを実現する上で、複数機能の集積化は今後の課題の一つである。化学分析を行うにあたり、必要となる基本的な操作に、溶液の混合とpHの調節がある。本研究では、電気化学的原理を用いることにより、これらの機能が容易に微小なチップ上に集積化され、しかも操作の自動化も実現できることを示す。また、ここにセンシング機能を集積化するのは難しくない。本研究ではさらに電気化学発光を利用したセンシングもチップ上で行えることを示す。
研究内容
 Ru(bpy)32+を含む試薬溶液を液溜めに注入すると、毛細管現象によって自発的に反応槽まで送液された。次いでアミノ酸を含むサンプル溶液を注入し、バルブを隔てた各領域を満たし、参照極に溶液が到達すると、自動的にバルブに電圧が印加され、エレクトロウェッティングによって溶液が自動的に混合された。さらにpHレギュレータの作用極に電位を印加し、反応槽内のpHを12に調整した。この時、作用極電位を同じ値に固定すると、フィードバック機能が働き、pHは一定値に維持された。その後、反応容器中のイリジウム電極に+1.1 V (vs. Ag/AgCl)を印加して電気化学発光を発生させ、この発光をシステム上部に固定したフォトダイオードを用いて検出した。この時の発光強度はアミノ酸の濃度に対して1 μM ~ 0.1 nMの範囲で直線的な関係を示し、アミノ酸に対する高感度検出が可能であることが示された。
[参考資料]
Hiroki Hosono, Wataru Satoh, Junji Fukuda, and Hiroaki Suzuki, “Microanalysis System Based on Electrochemiluminescence Detection,”
SENSORS AND MATERIALS Vol. 19, No. 4 (2007) 191-201